クリニック(診療所) の新規開業を失敗させないための支援
厚労省の資料によると全国の診療所数は10万件を超え、年間7,000件の開設が続いています。
これは組織変更や移転、管理者の変更等を除くと、実質的には年間約2,000件と考えられます。
特に新規開業は都市部に集中しており、地方では人口減少地域等へ高齢医師の診療所等の事業継承開業や専門性や特徴をもった差別化した開業や一方では幅広い疾病の患者受け入れている開業もが増えています。新規開業を行う医師像は、40代である程度の経験とスキルを持った先生が多いのは変わりません。しかし30代の若い先生や医療機関での定年を見据えた50代の先生の開業も増えています。年齢によって開業の目的や行いたい医療も変わってきます。開業はオーダーメードですので、資金や設備など自分に最も合った計画を立てることが大切です。
開業を検討するうえでの留意点
- 診療方針の確立
- 開業の具体的スケジュール(戸建て開業とテナント開業)
- クリニックの開業時期(診療科目別)の設定
- 開業地(開業場所)選定 ※診療圏調査
- 事業計画作成
- 開業資金の調達 ※金融機関の選定・交渉
- 借入に対するリスクヘッジ検討 ※生保等加入検討
- 設計事務所選定 ※建築確認申請・実設計
- 医療機器・備品の選定
- 税理士・社会保険労務士の選定
- 職員募集と採用 ※職員研修
- 開設手続き
- 開業準備はいつ頃から行うべきか?
- ビルなどのテナント診療所では1年前、戸建て診療所の場合(場所の選定や建物の工事にかかる時間を考慮して2年以上前から行うのが望ましいです。
- 開業エリアをどのように絞り込めばよいか?
- 一般的な内科なら高齢者が多く住む住宅地をターゲットとすべきですし、専門性の高い診療科目は市街地や地方からアクセスしやすい場所が望ましく、診療科目や診療方針にマッチしたエリアを選ぶことが大切です。また、最も患者さんの来院が期待できるのは、半径500m~1000mの一次診療圏ですので、そのエリアの分析は重要です。各都道府県が構築している医療情報提供システムを参照すれば、各医療機関の一日平均外来患者数を確認できるので、競合診療所との力関係を考慮した上で、エリアを検討するのが望ましいです。。
- 資金の借り入れについて
- 銀行・信用金庫等の医師限定ローンの多くは、担保・保証人不要で5千万円に設定されています。複数の金融機関を検討し、融資枠が大きい、返済期間が長いなど少しでも有利なものを選びましょう。経営が軌道に乗るまでの運転資金を十分に確保するためにも、自己資金は少しでも多く用意するのが望ましいです。
- 資金計画の策定ポイントは
- 開業してすぐに多数の患者さんが来ることは少ないです。地域の患者さんたちに認知されるまでの期間が必要です。その期間を無理なく乗り切れる堅実な計画を立てることが大切です。一日に何人の患者さんが来院すれば収入が経費を上回り、黒字化するのかを確認することが必要です。その際、願望や思い込みでなく、客観的な視点で患者数を予測することが重要です。
- スタッフ採用での注意点は
- 来院した患者さんが最も長い時間接するのは先生ではなくスタッフです、クリニックの印象はスタッフの態度や対応に左右されます。そこが悪いと再診に繋がらず、良い口コミも生まれません。
患者さんにとっての最大の情報源は「あの診療所は良いよ!!」という口コミです。
やはりポイントは良い人材を採用する事。面接には必ず複数の人間が立ち会い、複数の視点で判断することが大切です。また、一次面接、最終面接と複数回行うことで応募者の人となりをより深く見る事も大切です。
- 開業準備を進める上で注意すべき点は
- 開業準備をスムーズに進めるためには、信頼できる専門家の支援が必要ですが、ともすれば耳に優しい事しか言わないイエスマンが周囲に集まりがちです。すでに開業している大学の先輩など、時には自分の意見に「NO」と言ってくれる人の話を聞くことも必要です。決して人任せにせず、自分の頭で考え、自分で決断することが大切です。
- 開業を失敗しないための最重要ポイント
- 常に患者さん目線に立って考えることです。診療科目、スタッフ、設備、広告など「どうすれば患者さんに満足してもらえるか?」「自院を選んでもらえるか?」を最優先に考えることが最も重要です。
開業はゴールではなく、あくまで事業としてのスタートです。多額の投資とスタッフを抱え、何十年にも及ぶ事業をスタートさせるという覚悟と気概を持って、入念な準備で進めることが大切です。
開業関係者と交渉で気をつけなければならないのが、多くの業者は自分たちのビジネスのための発言をしています。関係業者の多くは開業がゴールです。先生方にとってはスタートだという事を忘れてはいけません。